naruno

代表曲である「春の底」は2021/3/9時点で26,000回を超えており注目度の高さが伺えます、ボカロPのnarunoさんにインタビューさせて頂きました。今回のインタビューでは楽曲のことのみならず、narunoさんのボーカロイドに対する熱い思いや、ボカロやネット発の音楽が世の中に浸透してきている今、ボカロという音楽の在り方について現役ボカロPとしての考えについてもいろいろ聞くことができました!

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ELICITYインタビューお受けいただき、ありがとうございます。
初めに自己紹介をお願いします。

こんにちは!narunoと申します。ボカロPをしています。

音楽を始めたきっかけや本格的にボカロP活動を始めることになったタイミングなど今までの音楽経歴について教えてください。

 実は、音楽を始めたきっかけはボカロなんです。 中1の時にインターネットを触り出して、ニコニコ動画でボカロに出逢いました。neruさんの『命のユースティティア』を聴いた時の衝撃は今でも覚えています。そこからボカロをずっと聴いていました。言い換えれば、音楽との出逢いはボカロだったんです。 それで自分もボカロ曲を作りたい!となって、中2の時に初音ミクV3を買いました。しかしソフトを弄って気付いたんですが、インストールしただけでは曲は作れなかったんですね。当時は作曲なんて簡単だろうと漠然と思っていたんですが、本当に何もできなかった。第一、楽器も弾いたことがありませんでした。今考えると本当に舐めていましたね(笑)。
 そこでこのままではまずいと思い、一旦ソフトは置いておいて、ギターを始めました。そしてある程度いろいろと理解したところで、ソフトを再び弄り出すようになったんです。 最初は短めのインスト曲を作っていたんですが、そこに初音ミク10周年のタイミングが重なりました。初音ミク10周年の雰囲気は今考えても異様でしたね。そしてその異様な雰囲気に見事に触発されて、これは何としても自分も初音ミクの曲を投稿しなければと思い、急いで作った処女作『dear』を投稿しました(結局初音ミクの誕生日には少し遅れちゃったんですが)。これがボカロP活動の始まりです。この曲には色々思い出が詰まっています。

ボカロでも他のジャンルでも自身の音楽性に影響を与えたものについてお伺いできればと思います、音楽やそれ以外のコンテンツでも構いません。

やはりボカロを聴いて育ったと言っても過言ではないので、ボカロPさんにはとても影響を受けていると思います。中高の頃はじんさん、neruさん、ピノキオピーさん、wowakaさん、ハチさんなどを聴いていました。週刊VOCALOIDランキングを見たり、新着順にソートして全部漁っていた時期もありました。 ボカロ以外で言えば、ヨルシカやamazarashiは特に言葉の回し方において影響を受けていると思いますね。それとポストロックにハマりかけた時期があって、特にspangle call lili lineはよく聴いていました。 声優さんの曲もたまに聴いたりするんですが、中でも花澤香菜さんのアルバムはとても良くてずっと聴いていた時期がありました。何より声が良い(笑)。

ボカロというジャンルに限らず自分の活動において意識しているアーティストなどはいますか?

 曲作りでは特に意識はしないようにしているんですが、結果的に影響を受けているものはあるかもしれないです。ただ、活動のモチベーションの上では周りのボカロPに日々刺激されています。みんな精力的に曲を制作しているし、そういう姿を見てモチベーションが上がっている面は間違いなくあると思いますね。そういう点で言えば、イラストレーターさんやその他活動者さんにも良い影響を貰っているかもしれないです。

バンドやユニット、シンガーソングライターなど自分の音楽を発信していく手法としては様々なものがありますが、ボカロPとして活動していくことを選んだのはなぜでしょうか?

 正直な話、ボカロPになる事を目標にやっていたような物なので、それ以外の選択肢が目に入りにくかったというのが半分です(笑)。高校生がロックバンドに憧れるように、ボカロPこそが最高に格好いい表現者であると思っていたし、そうなりたいと思っていた。その点今は幸せですね。
 ただギターを始めた時点でバンドを組むという選択は有り得て、実際ちょっとは考えたんですよね。その頃アニメの『けいおん!』を観ていて憧れていたというのもありました。しかし最大の問題として、一緒にバンドを組むような友達が揃わなかった(笑)。外部のバンドに入る実力もモチベーションも無かったので、そのままやらず仕舞いという事になりました。

ここからはボーカロイドやその文化に関してnarunoさんのご意見を聞いてみたいなと思います。

①Youtubeの楽曲を拝見する限りでは、初音ミクをオンリーで作曲されていると思いますが、なにかこだわりはあるのでしょうか?また初音ミク以外でもつかってみたいボーカロイドはありますか?

 初音ミクには元々ファンだったこともあって思い入れはそれなりにあります。やはり一番最初に触れたボカロが初音ミクだったので、そこからずっと関係が続いているという感覚です。特に初音ミクdarkというライブラリの質感が好きで、良く使っていますね。楽曲にも馴染んでくれるし、程よくアンニュイな雰囲気がある。色々な意味で良いライブラリです。
 ただ、ミクが好きだからミクしか使いたくない!というわけでは全くなくて、むしろ他のボカロも積極的に使っていきたいです。表現の幅も大きく拡がって、同じ楽曲でも雰囲気がガラッと変わると思いますし。今特に気になっているのはflowerです。流行りというのもあるんですが、何よりも歌声に強度があるんですよね。胸をついてくる、迫ってくるものがある。無愛想な可愛さにどこか寂しさがちらつくのも良いところだと思います。そして気になっていると言えば、UTAUの歌声ライブラリも魅力的だと思います。ボカロとはまた違う質感に引き寄せられるんですよね。今後は色々なライブラリを使っていこうと思います。

②昨今ボカロや歌ってみたなど、いわゆる生のLIVE主体というよりは音源をアップする活動をベースとした「ネット発の音楽」や「ボカロP」という存在がだいぶ世の中に受け入れられて来たと感じていますが、このような世の中の反応についてボカロPとしてどのような印象をもたれましたか?

 ネット音楽が世の中に広まって、偏見が無くなることはとても喜ばしいことだと素直に思います。今までネット音楽というだけで敬遠され、埋もれてきた曲が正当に評価されるのは良いことですよね。 ただ少し脱線しますが、それによってボカロが「主流」に寄っていくのは少し違うかな、とも感じています。ボカロはサブカルチャー、あるいはユースカルチャーであってこそと思っているので。難しいですね。

③ボカロの登場は自分の曲を世に出すというハードル下げたことのみならず、音源に伴ったMVやイラストを作成するクリエイターだったり、歌い手として他人の曲を歌うことで表現するなど、多くの人に可能性ときっかけを提供できるプラットフォームになっていると思います。今後も根強い人気のコンテンツとなると思いますが、ボカロが続いていくためにはどのような変化が必要になると思いますか?ボカロP視点でのご意見を聞かせて頂ければと嬉しいです。

 多くの人へのプラットフォームになっているというのは、まさに僕のいつも思っているところです。初めてマジカルミライという初音ミクたちボカロのライブに行った時、すごくびっくりしたんですよね。今までニコ動やYouTubeのコメントでしか見えなかったボカロファンたちが、画面の向こうにこんなにも居るのかと。ボカロカルチャーを支えているのは、他でもない「人」なんだとそこで改めて認識しました。ボカロがハブとなって、多くの人が繋がっていくイメージです。 ボカロはこの先当分は続いていくのだと思いますが、さらに発展的に続いていくためには、僕はこうした「人と人との繋がり」が何より大切になるのではないかと思っています。それは当然ボカロPだけではなく、イラストレーターさんや動画クリエーターさん、歌い手さんに踊り手さん、ひいてはリスナーも含めた繋がりです。
 今はこの繋がりを支えるプラットフォームがTwitterに依存しがちな気がするんですよね。もちろんそれが駄目というわけではないんですが、ニコ動やYouTube、piaproやkiiteの要素も含んだ「ボカロカルチャー向け総合プラットフォーム」があると素敵だなーと思います。技術的なハードルがあったり、カルチャーが閉鎖的になる恐れがあるというのは承知の上で、ただの可能性の夢想と捉えていただければ(笑)。

「春の底」や「眠り姫を見る」「nightmare」などを拝聴させて頂きまして、いずれも日常的な穏やかさがとても心地よく、心に沁み渡るようでした。こういった楽曲はどのように制作されるのか、その過程についてお聞きできればと思います。

 曲を考える時はまず鼻歌でメロディーを作るかコードを決めるかの二択で、そこから広げていく感じですね。歌詞は後から書きます。ただサビなど印象的な箇所は、大体メロディーと歌詞が一緒に出てきます。実は自分の曲は、穏やかにしようと思って作っているわけでもないんですね。ただ結果的にそう言われることが多いので、そこはプラスに捉えています(笑)。丸い音が好きだったりメロディーの運び方だったり、そういうのが影響しているのかなーと思います。

narunoさんの代表作「春の底」についていくつかお聞きしたいと思います。  

①初音ミクの囁くような歌と、まさしく春のまどろむような雰囲気のサウンドがとてもマッチした素敵な楽曲だと感じました。この曲のこの部分を聞いてほしい!という必聴ポイントがあればお願いします。

 ありがとうございます!嬉しいです。必聴ポイントと言えばやはりピアノリフですかね。あそこは跳ねる感じにこだわって作ったので、自分でも良いメロディーだと思います。あとは2番Aメロのベースも少し凝った記憶があります。自分でも聴いていて楽しいです。  

②MVのアートワークはアルセチカさんがご担当されていますが、優しい色味や絵のタッチが、narunoさんの楽曲とは相性がとてもいいなと感じます。こちらのアートワークのイメージやコンセプトについてお伺いしたいです。

 『春の底』はシリーズのうちの一曲なんですが、アルセチカさんにそのイメージと全体像をお伝えしつつ、話し合いながらその場で描いて頂きました。春に沈むイメージです。結果として愁う春の雰囲気が色使いや目線から見事に表現されていて、素晴らしいイラストになっていると思います。アルセチカさんは本当にすごいです…。

音楽とは関係ないnarunoさんの私生活を少し垣間見てみたいのですが、音楽以外の趣味やハマっているコンテンツなどがあれば教えてください。

 最近はVtuberやゲームにハマっています。ゲームは大体apexですが、ps4のゲームも買ってはいて積んでいる状態です(笑)。たまに本も読むんですが、純文学か新書に偏るので、少し他の本も読もうかなと思っています。

Vtuberとしてもご活動されているようですが、こちらの活動のきっかけやコンセプトについてお聞きできればと思います。

 これは完全にノリでやった企画です…。Vtuberになりたかったんですね。実はもう一個立ち絵があって、怪物みたいな見た目をしているんですが、いつ放出しようか悩んでいます。多分大不評だと思います。

たくさんの楽曲の中から選ぶのは大変かと思いますが、初めての方に聞いてほしいイチオシのご自身の曲を教えてください。

 『独歩』という曲は特に聴いてほしいなと思います。柔らかさを残しつつ歌詞では結構キツいことを言うのが目指す表現に近いんですが、そこをうまい塩梅に落とし込めたので気に入っています。

今後の活動についてnarunoさんとして実現したい目標があれば教えてください。

 とにかく自分が好きだと言える曲を作ることですね。これに尽きます。あとはミク以外の歌唱や楽曲提供などもたくさん経験してみたいです。

ありがとうございました。最後に読者の方へのメッセージをお願いします!

ここまで読んで頂きありがとうございました。これからもnarunoをよろしくお願いします!




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